なぜ、YN会を始めたか?
もう、私は30年以上、東大受験/医学部受験の手伝いを、やってきた。私にとっては、この仕事は、若い優秀な学生に出会うことができることが利点であり楽しい一方で、受験指導そのものは、そう面白いものではない。
受験指導などという下らない、知的なレベルの低いことに、職業人生をかけたいとは、私は思ったことがない。困っている学生を援けることは、楽しいことだが、受験産業の片棒を担ぐようなことは、私には魅力的に見えない。
しかし、先日、かつての卒業生と会って、話をした時に、フランス大統領と会って仕事をするような、あの立派な人物が、「今でも仕事に行き詰まった時には、先生が作って下さったプリントを読み返すのです。そして、『頭というのは、こう使うのだ』と思い直して、喝を自分に入れるのです」と言うのである。彼は、言葉を継いで、「先生が一般向けの情報提供を辞めてしまわれた経緯やお気持ちはお察ししておりますが、地方に住んでいる私には、あの情報提供は貴重でした。地方にいる学生の便宜のために、なんとか、もう一度、一般向けに教えてやっては頂けないでしょうか」と言うのである。
立派に出世をして、今では、押しも押されぬ、所謂、超上級国民になった彼は、元々は、地方の高校の出身で、それも恐らく、私の間違いでなければ、あまり有名な進学校でもなかったのだろう。しかし、彼は、やりとりを始めたその時から、はっきりそれと分かる才能を示しており、非常に強く深い印象を私に刻んだ人物である。彼の依頼なら、私は、可能な限り引き受けることにした。